「収入は増えたけれど、医療費が高すぎる」。
ドバイへ移住した人のこんな声を紹介する記事が、7月末に話題になりました。
所得税のない街で、なぜお金の悩みが出るのでしょうか。
答えはひとつ。ドバイが「保険がすべて」の街だからです。
日本の保険証の感覚のまま病院へ行くと、たしかに驚きます。
本記事は、その仕組みを公式情報で順番に整理します。
「医療費が高すぎる」という声の正体
きっかけは、2026年7月末に配信されたお金の情報サイトの記事です。
ドバイへ移住した人が「収入は増えたけれど、医療費が高すぎる」とこぼす。そんな相談が紹介されました。
不思議に思いませんか。
ドバイには所得税がなく、手取りは増えるはずの街です。
からくりは、医療費の決まり方にあります。
日本では、どの病院に行っても保険証1枚で自己負担は原則3割。
ドバイでは、入っている保険のプラン次第で、行ける病院も支払う額も大きく変わるのです。
出典: ファイナンシャルフィールド(2026年7月29日配信・Yahoo!ニュース)
医療の水準は高い。ただし「保険が前提」の街
先に安心材料からお伝えします。
外務省の「世界の医療事情」は、UAEの医療施設を「日本と同等ないしそれ以上の水準」と評価しています。
建物も設備も新しく、外国人は私立病院にかかるのが一般的です。
そのうえで、同じページにはこうあります。
「当地の医療費はかなり高額になることがあります」。
だからドバイでは、長期滞在者に民間の医療保険への加入が義務づけられています。
保険がビザの前提であり、住んでいる人は全員なんらかの保険に入っている。
「保険で守られた高い医療」——これがドバイの基本設計です。
保険がないと、いくらかかるのか
では、保険が使えない場面ではいくらかかるのか。
現地の医療情報サイトがまとめた目安を紹介します。
私立病院の一般診察が150〜500ディルハム(約6,500〜21,500円)。
盲腸(虫垂炎)の手術になると1万5,000〜2万5,000ディルハム(約65万〜108万円)とされています。
日本で保険証を出して払う額とは、桁がひとつ違います。
さらに外務省は、こんな注意も出しています。
入院や手術の前に、高額の保証金を求められることがある。
旅行者の海外旅行保険は、日系クリニック以外ではその場での精算(キャッシュレス)がほぼ使えず、いったん現金かカードで払うことになります。
「医療費が高すぎる」という移住者の声は、大げさではないのです。
出典: Kaigaijin(現地情報サイト・費用の目安) / 外務省「世界の医療事情」
会社が払うのは「あなたの分」だけ
「保険は会社が用意してくれるなら安心では?」と思われたかもしれません。
半分は正しく、半分は落とし穴です。
ドバイでは2013年の健康保険法(法律11号)により、会社は従業員の保険料を全額負担する義務があります。
給料からの天引きも禁止。ここまでは手厚い仕組みです。
落とし穴は家族です。
呼び寄せた配偶者や子どもの保険は、原則として本人の責任。会社に付ける義務はありません。
保険料は年齢や補償範囲で大きく変わるため、家族が多いほど「見えない生活費」が膨らみます。
なお2025年1月からは、この保険義務がUAE全土に広がりました。
年320ディルハム(約1万4千円)の基本パッケージも用意されましたが、これは最低限の網です。
外来で25%、入院で20%の自己負担が残り、歯科や眼科などプランによっては対象外の診療もあります。
| 日本 | ドバイ | |
|---|---|---|
| 保険のかたち | 国の健康保険に全員加入 | 民間保険への加入が義務 |
| 保険料を払う人 | 本人と勤め先で分担が基本 | 従業員の分は会社が全額負担 |
| 家族の分 | 扶養に入れば保険料の追加なしが基本 | 原則、本人の負担で加入させる |
| 窓口での支払い | 原則3割 | プラン次第(基本プランは外来25%など) |
出典: UAE政府公式ポータル(保険制度の解説) / ドバイ保健庁・健康保険法の公式FAQ
日本の保険証の感覚を、一度手放す
編集部の見立てを、はっきり書きます。
ドバイの医療費の話は「高いから危ない」ではなく、「守られ方が日本と違う」という話です。
日本は、国の保険が全員を薄く広く守る国。
ドバイは、義務づけられた民間保険が「契約の範囲だけ」しっかり守る街。
だから移住や長期滞在を考えるなら、収入より先に「どの保険に、誰の分まで入るか」を確かめる。それが正しい順番だと私たちは考えます。
旅行で行くだけの方も、他人事ではありません。
海外旅行保険に入らず体調を崩せば、先ほどの金額がそのまま自分の請求書になります。
ドバイに限らず、海外旅行保険は「入るかどうか」ではなく「どれに入るか」で考えたい保険です。
よくある質問
Q1. 旅行で数日行くだけでも、保険は必要ですか?
強くおすすめします。外務省によると、旅行者の海外旅行保険はドバイの日系クリニック以外でその場での精算がほぼ使えず、現金かカードでの立て替えが必要です。入院や手術では事前に高額の保証金を求められることもあります。
Q2. 会社の保険で、家族の分もカバーされますか?
ドバイで会社に義務づけられているのは従業員本人の分だけです。配偶者や子どもの保険は、会社が任意で付けない限り、呼び寄せた本人の責任で加入させます。家族の人数と年齢によっては、大きな固定費になります。
Q3. 保険に入っていれば、支払いはゼロですか?
ゼロにはなりません。たとえば2025年に導入された基本パッケージでは、外来で25%、入院で20%の自己負担が残ります。歯科・眼科・妊娠出産・持病などは、プランによっては対象外です。契約範囲の確認がすべてです。
Q4. そもそもドバイの医療は信頼できますか?
外務省は医療施設を「日本と同等ないしそれ以上の水準」と評価しています。ただし同じページで、難病や高度な治療・手術が必要な場合は日本への帰国や移送を考慮することが望ましい、とも書かれています。
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「暮らしを覗く」は、ドバイの生活の実際を公開情報で読み解くシリーズです。
本記事について
- 本記事は情報提供を目的としています
- 記事内容は2026年8月3日時点のものであり、最新性を保証するものではありません
- 保険の義務・補償の範囲は制度改正で変わります。最新情報はUAE政府・ドバイ保健庁の公式情報でご確認ください
- 医療費の目安は現地情報サイトの公表値であり、病院・診療内容により大きく異なります
- 円換算は1ディルハム=約43円(2026年8月上旬)で計算しており、為替により変動します
- 本記事は特定の保険商品・医療機関の利用をすすめるものではありません
- 本記事の情報に基づく行動の結果について、当媒体は責任を負いかねます
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