「2千万円あれば、ドバイに永住できるらしい」。
知人からそう聞いて、心が少し動いた方へ。
結論から言います。この話は、二つの点で少しだけ違います。
一つは「永住」という言葉。もう一つは「2千万円」という金額です。
ドバイには、日本のような「永住権」はありません。
そして、よく話題になる10年ビザに必要なお金は、2千万円ではありません。
本記事は、公式情報だけを使って、この噂の中身をほどいていきます。
特定の物件をすすめる話は一切しません。数字とルールを、一緒に確かめる回です。
ドバイに「永住権」はない――まず、ここが誤解の入口
いちばん大事な前提から始めます。
ドバイのある国、UAE(アラブ首長国連邦)には、日本の「永住権」にあたる制度がありません。
外国人が長く住むための仕組みは、あくまで「一定期間ごとに更新する居住ビザ」です。
話題の「ゴールデンビザ」も、その一つ。
UAE政府の公式説明では、これは長期の、更新できる居住ビザと書かれています。
永住権でも、国籍でもありません。
つまり「一度取れば一生安泰」ではなく、「条件を満たし続ければ、更新して住み続けられる」ビザです。
言葉が一人歩きして「永住」と伝わっているだけ、というのが実際のところです。
出典: UAE政府ポータル u.ae(ゴールデンビザの説明) / 連邦身分・国籍局 ICP
金額で決まる――「2千万円」で届くのは、どのビザか
では、お金の話です。ここがいちばん誤解されています。
不動産でゴールデンビザ(10年)を取るには、公式の基準で200万ディルハム以上の物件が必要です。
日本円にすると、およそ8,800万円(1ディルハム=約44円、2026年7月時点)。
2千万円とは、桁が一つ違います。
一方で、もっと手前のビザもあります。
不動産による2年間の投資家ビザです。
従来は75万ディルハム(約3,300万円)ほどから、という案内が一般的でした。
「2千万円」という金額が届くとしたら、この2年ビザの入口あたり。
つまり噂の正体は、「10年の”永住風”ビザ」ではなく、「2年ごとに更新する投資家ビザ」だった、という話に近いのです。
なお、この2年ビザの条件は2026年に見直されたとの報道もあります(後述)。
金額の基準は動くため、必ず最新の公式情報でご確認ください。
💡 ここだけ覚えれば十分です。
「2千万円で永住」は、正しくは「数千万円で”更新制”の居住ビザ」。
長く住める入口ではありますが、”一生ぶんの権利を一括で買う”ものではありません。
出典: Dubai Land Department(ゴールデンビザ投資家向け・AED200万) / GDRFA Dubai(不動産ゴールデンビザ条件) / Gulf News(2年投資家ビザの条件)
早見表で並べると、こうなります。
| ビザの種類 | 物件の目安額 | 期間 | 性質 |
|---|---|---|---|
| 投資家ビザ(不動産) | 約3,300万円〜(75万ディルハム〜) | 2年・更新制 | 2026年に条件見直しの報道あり |
| ゴールデンビザ(不動産) | 約8,800万円(200万ディルハム) | 10年・更新制 | 公式で明記。窓口により5年表記もあり |
円換算は1ディルハム=約44円(2026年7月時点)。為替で変動します。
「頭金50%が要らなくなった」は本当か――報道と公式のズレ
もう一つ、最近よく聞く話があります。
「ローンを組んで買っても、ゴールデンビザが取れるようになった」というものです。
たしかに、そう報じられています。
複数の不動産・移住系メディアは、2026年に入って「物件代金の50%を先に払い済みでなくてもよくなった」と伝えています。
ドバイ側の公式(GDRFA)も、ローン付きの物件も対象になり得ると記載しています。
ただし、私たちはここを慎重に扱います。
連邦側の別の公式ページには、いまも「ローンなしの物件」という従来の表現が残っているからです。
公式どうしで、書きぶりがそろっていません。
つまり「変わったらしい」までは言えても、「どの窓口でも確実にこう」とまでは言い切れない。
この手続きに実際に進むなら、申請の直前に最新の公式条件を確認する。
これが、いま取れる一番安全な構えです。
出典: GDRFA Dubai(ローン付き物件の扱い) / ICP(連邦・従来表現が残るページ)
見落としやすい”重り”――ビザが続く限り、その家は売れない
金額と手続きの次に、いちばん見落とされがちな点をお伝えします。
不動産でゴールデンビザを取ると、その物件には「担保」のような印が付きます。
ドバイの公式(GDRFA)の説明では、ビザが有効なあいだ、その物件は原則として手放せません。
これは、なかなか重い条件です。
8,800万円ぶんの資産が、10年のあいだ「売って現金に戻しにくい」状態で固定される、ということだからです。
投資の世界では、必要なときにお金に戻せる度合いを「換金のしやすさ」と呼びます。
ビザ目的の物件は、この換金のしやすさが大きく下がる。
「値上がりしたから売ろう」も「急にお金が要る」も、簡単にはできません。
⚠️ 注意: ビザのために不動産を持つと、「住む・貸す」目的の物件より制約が増えます。売却の制限に加え、日本に住む私たちには為替の振れも乗ります。ドバイの通貨は米ドルに固定されているため、円高に戻ると、物件価格が同じでも円での価値は目減りします。
出典: GDRFA Dubai(物件の担保設定・保有継続条件) / UAE中央銀行(ドルペッグの根拠)
だから何?――ビザ目当てで家を買う前の3つの確認
編集部の見立てを、はっきり言います。
「2千万円で永住」という言葉のイメージだけで、話を進めないほうがいい。
ドバイの居住ビザは、たしかに家族で長く住める道につながります。
配偶者やお子さんも一緒に居住許可を得られる、と公式に書かれています。
そこは事実で、魅力でもあります。
ただ、それは「永住権」ではなく、金額もイメージより大きい。
そして、資産が長く固定される。
この三つを分かったうえで検討するのと、噂のまま飛びつくのとでは、後の安心感がまるで違います。
💡 進める前の3つの確認:
①目的は「住むこと」か「ビザという肩書」か(肩書だけなら、固定される資産の重さに見合うか)。
②その資金は、10年動かせなくても老後の設計が崩れないお金か。
③手続きの条件は、申請の直前に公式(u.ae・GDRFA)で最新を確認したか。
知人にすすめられた話ほど、いったん数字とルールに戻して確かめる。
慌てない人が、いちばん損をしにくい。
私たちは、そう考えます。
出典: UAE政府ポータル u.ae(家族帯同・居住ビザ全般)
よくある質問
Q1. 「2千万円でドバイに永住」は本当ですか?
正確ではありません。まず、ドバイに日本のような「永住権」はなく、あるのは更新制の居住ビザです。次に、話題の10年ゴールデンビザに必要なのは200万ディルハム(約8,800万円)の物件で、2千万円では届きません。2千万円の水準で近いのは、2年ごとに更新する投資家ビザのほうです。
Q2. ゴールデンビザは「一生もの」ですか?
いいえ。UAE政府の公式説明では、長期ではあるものの「更新して住み続ける」ビザとされています。条件を満たし続ければ更新できますが、永住権や国籍とは異なります。なお有効期間は公式ページ間で「10年」と「5年」の表記が混在しており、窓口や枠で扱いが分かれる可能性があります。
Q3. ローンを組んでもゴールデンビザは取れますか?
「取れるようになった」と複数のメディアが2026年に報じ、ドバイ側の公式もローン付き物件を対象に含めると記載しています。ただし連邦側の別の公式ページには従来の「ローンなし」の表現が残っており、公式どうしで書きぶりがそろっていません。申請の直前に最新の公式条件を確認することをおすすめします。
Q4. ビザのために買った物件は、あとで売れますか?
原則として、ビザが有効なあいだは手放せません。ドバイの公式(GDRFA)によると、物件には担保のような印が付き、保有し続けることがビザ維持の条件になります。「値上がりしたら売る」「急にお金が要る」に対応しにくい点は、事前に理解しておく必要があります。
Q5. 家族も一緒に住めますか?
はい。UAE政府の公式情報では、配偶者やお子さんにも居住許可を出せるとされています。スポンサー(身元引受人)が別に要らない点も、このビザの特徴です。ただし、これは「住む権利」であって、資産運用としての損得とは別の話です。
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「投資の選択肢」は、ドバイの投資にまつわる仕組みを、特定の商品をすすめずに公開情報で読み解く解説枠です。
本記事について
- 本記事は情報提供を目的としています
- 記事内容は2026年7月15日時点のものであり、最新性を保証するものではありません
- ビザ・税制・投資の制度は変更される可能性があります。最新情報は公式機関(u.ae・GDRFA等)でご確認ください
- 円換算は1ディルハム=約44円(2026年7月時点)で計算しており、為替により変動します
- 「頭金条件の撤廃」は複数の報道に基づく記述であり、公式ページ間で表現に差があります。実際の手続き前に公式確認をおすすめします
- 本記事の情報に基づく行動の結果について、当媒体は責任を負いかねます
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