2兆円の人工島が廃墟に。ドバイと何が違ったか

2兆円の人工島が廃墟に。ドバイと何が違ったか
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「ドバイのような島を造る」。

そう掲げて、中国が海南島の沖に人工島を築きました。

10年が過ぎたいま、そこはほとんど人の住まない場所になっています。

8月18日、この話が日本でも広く読まれました。

目にした方の多くは、次にこう思ったはずです。

「見た目が同じなら、ドバイもいつか同じ道をたどるのではないか」。

その不安に、感想ではなく物差しでお答えします。

先に私たちの立場を申し上げます。

ドバイが同じ轍を踏まない保証は、どこにもありません。

ただし、この2つを分けた違いは3つに絞れます。

どれも、日本にいながら数字と条文で確かめられるものです。

「中国のドバイ」を目指した島で、何が起きたのか

舞台は中国・海南省の儋州市沖にある海花島です。

2012年に埋め立てが始まり、敷地は800ヘクタール。

ドバイのパーム・ジュメイラの、およそ1.5倍の広さがあります。

計画は壮大でした。

掲げられた総投資額は1,600億元

実際に投じられた額は、報道では約120億ドル(約1兆9,000億円)とされています。

いまの姿は、その計画とかけ離れています。

5,000室のホテルは大半の部屋が一度も使われず、遊園地も大型商業施設も開いていません。

別荘の並ぶ区画には、人が住んでいません。

価格の動きが、この10年をいちばんよく表しています。

売り出し当初は1平方メートルあたり5,000元(約12万円)でした。

それが2万元を超えるまで上がり、2022年には売り出し当初の水準まで戻っています。

現地の不動産仲介業者は、冬でも約半数の住宅が長期の空き家だと推計しています。

夏に人が住んでいるのは2割ほどだといいます。

出典: ドイチェ・ヴェレ中国語版(2026年6月30日) / プレジデントオンライン(2026年8月18日)

手本にした側と共通していたのは、「見た目」だけだった

なぜこうなったのか。

理由をひとつに絞るなら、この島には最初から住む人の当てがなかったことに尽きます。

パーム・ジュメイラからまねたのは、島の形と規模でした。

まねなかったのは、人が集まる仕組みのほうです。

2021年末には、39棟の高層住宅に解体命令が出ました。

建築の許可を違法に得たとされたためです。

その後どう処理されたかは報道が食い違っており、私たちは確認できていません。

ただ、解体されたかどうかは本質ではありません。

ほぼ完成した棟が一戸も売れないまま10年が過ぎた、という事実のほうが重いのです。

分かれ目1: 実際に住む人が増えているか

ここから、確かめられる物差しの話に移ります。

1つ目はいちばん単純で、人が増えているかどうかです。

ドバイに住む人は、2025年末で458万人でした。

1年間で33万2,000人増えています。

これは不動産会社の宣伝資料ではありません。

ドバイ政府が2026年7月30日に発表した公式の人口統計です。

通勤者と旅行者を含めた昼間の人数は、639万人になります。

海花島では、冬に半数が空き家でした。

ドバイでは、1年で人口の7.5%にあたる人が新しく住み始めています。

同じ人工島という言葉でも、この一点で話がまるで変わります。

出典: ドバイ政府 Digital Dubai 発表(2026年7月30日)

分かれ目2と3: 払ったお金と、名義の行方

2つ目は、買った代金がどう扱われるかです。

ドバイでは、完成前の物件に払ったお金は事業ごとの専用口座に隔離されます。

2007年の法律で義務づけられており、工事の進み具合に応じてしか引き出せません。

開発会社が別の事業に回すことはできない仕組みです。

3つ目は、名義の話です。

ここが日本の方にいちばん伝わりにくく、そしていちばん大きな違いです。

見る点 海花島(中国) ドバイ
住む人 冬は約半数が長期の空き家(仲介業者の推計) 2025年末で458万人。1年で33.2万人増
払った代金 開発会社が資金繰りに詰まり工事が停止 事業ごとの専用口座に隔離。出来高の分しか出せない
名義 土地は国のもの。建物と70年の使用権まで 指定地域なら期間の定めなく土地ごと持てる
外国人の扱い 1年以上の居住が必要。自分が住む1戸のみ 居住していなくても購入可。貸すことも相続もできる

中国では、都市の土地はすべて国のものです。

買えるのは建物と、70年間その土地を使う権利までになります。

外国人は原則として1年以上その国に住んでいることが必要で、自分が住むための1戸に限られます。

ドバイでは、指定された地域に限り、外国人が期間の定めなく土地ごと所有できます。

2006年の法律の条文に、そう書かれています。

この差が、最後に効きました。

海花島を買った人には、貸すという逃げ道がなかったのです。

自分で住まなければ、空き家にしておくよりありません。

では、ドバイは安全なのか。答えは「いいえ」です

ここまで読むと、ドバイなら大丈夫だと聞こえるかもしれません。

そうは書きません。

ドバイ自身が、2009年に住宅価格をピークから4〜5割下げています。

政府系の会社が借金の返済を待ってほしいと言い出し、隣のアブダビから100億ドルの支援を受けて、ようやく持ちこたえました。

17年前の出来事ですが、起きたことは事実です。

いまも心配の種はあります。

2025年末の住宅は約93万5,000戸でした。

2026年に約5万5,000戸、2027年に約7万5,000戸が引き渡される見込みだと集計されています。

新しく建つ部屋の3分の2はワンルームと1部屋の間取りです。

しかも5つの地区に偏っています。

だから、持つべき物差しは「ドバイだから安心」ではありません。

人が増え続けているか。

払った代金が守られているか。そして、自分の名義で持てるか。

この3つが崩れた瞬間、どの街の物件も海花島になり得ます。

逆に言えば、この3つは誰でも確かめられます。

勧められた話が来たときに、まずこの順で聞いてみてください。

よくある質問

Q1. ドバイの人工島も、いつか同じように廃墟になりますか?

可能性はゼロではありません。ドバイは2009年に住宅価格がピークから4〜5割下がり、政府系企業の債務問題で隣のアブダビから100億ドルの支援を受けた実績があります。ただし当時と違い、いまは人口が1年で33万人増えており、完成前物件の代金も法律で隔離されています。「絶対に大丈夫」でも「同じ道」でもなく、条件が変われば結果も変わる、というのが正確な答えです。

Q2. 海花島には、なぜ一戸も買い手がつかなかったのですか?

39棟については、2021年末に建築許可が違法だとして解体命令が出たため、販売できる状態ではなくなりました。より根本的な理由は、島に住む理由を持つ人がそもそも少なかったことです。買った人の多くが避暑や越冬の目的で、通年で暮らす人が集まりませんでした。

Q3. 完成前の物件を買うのは危なくないのですか?

危険がないとは言えません。ただしドバイには2007年の法律があり、買主が払ったお金は事業ごとの専用口座に入れることが義務づけられています。開発会社はそこから工事の出来高に応じた分しか引き出せず、別の事業への流用ができません。契約前に、その事業の専用口座が実在するかを確認することが要になります。

Q4. 中国とドバイで、外国人の持ち方はどう違いますか?

中国では土地はすべて国のもので、買えるのは建物と70年の土地使用権までです。外国人は原則1年以上その国に住んでいることが条件で、自分が住むための1戸に限られ、人に貸すことも認められていません。ドバイでは指定地域に限り、外国人でも期間の定めなく土地ごと所有でき、売却も賃貸も相続もできます。

Q5. これから見ておくべき数字は何ですか?

3つあります。ドバイ政府が発表する人口(増加が続いているか)、ドバイ土地局が四半期ごとに出す取引の件数と金額、そして年間の住宅引き渡し戸数です。とくに3つ目は2027年に約7万5,000戸と見込まれており、人口の増え方が追いつくかどうかが焦点になります。いずれも公式に公表されており、誰でも確認できます。

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「投資の現在地」は、ドバイの市場でいま何が起きているのかを、公開情報だけで確かめる枠です。

本記事について

  • 本記事は情報提供を目的としています
  • 記事内容は2026年8月24日時点のものであり、最新性を保証するものではありません
  • 海花島の39棟がその後どう処理されたかは報道が食い違っており、本記事では確認できていません
  • 円換算は1元=約23.6円、1ドル=約156円(いずれも2026年8月時点)で計算した概算です
  • 住宅の引き渡し見込み戸数は業界集計にもとづく推計値であり、公式統計ではありません
  • 本記事は特定の物件・開発会社・投資商品を推奨するものではありません
  • 本記事の情報に基づく行動の結果について、当媒体は責任を負いかねます

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