「今が買い時なのだろうか」。
ドバイ不動産のニュースを見て、そう感じた方へ。
2026年上半期の売買は、半年間として史上2番目の規模になりました。
ただ、数字をよく見ると、もう一つの顔が見えてきます。
「過去最高だった去年より、12%減っている」という顔です。
本記事では、この活況を慌てずに読み解く見方を、公開データで一緒に整理します。
急いで飛びつく前に、数字の両面を見るための回です。
「史上2番目」の中身――2,864億ディルハムという数字
まず、話題になっている数字そのものを確かめます。
2026年上半期(1〜6月)のドバイの不動産売買は、総額2,864億ディルハム。
日本円にすると約12.6兆円、米ドルで約779億ドルです。
取引の件数は8万6,005件にのぼりました。
半年間の実績として、これは史上2番目の大きさです。
数字の出どころは、ドバイ土地局(不動産を管理する政府機関)のデータにもとづく報道です。
では1番はいつか。
前の年、2025年上半期の3,266億ディルハム・11万8,132件です。
つまり今年は「過去最高だった去年に次ぐ2位」という位置づけになります。
出典: Economy Middle East(ドバイ土地局データにもとづく報道) / Arabian Business
数字には「もう一つの顔」がある――前年比は12%減
ここで、見落としたくない事実があります。
史上2番目でありながら、前の年の同じ時期と比べると、売買額は約12%減っています。
「過去2番目」と「前年より減少」が、同時に起きているのです。
なぜこんなことが起こるのか。
答えはシンプルで、比べる相手の2025年が「高すぎた」からです。
2025年上半期は、そのさらに前の年と比べて約39%増という異常な伸びでした。
その山が高すぎたぶん、今年はそこから少し下りている。
春先には中東情勢を受けて、取引が一時的に落ち込む場面もありました。
| 指標 | 2025年上半期 | 2026年上半期 |
|---|---|---|
| 売買総額 | 3,266億ディルハム(過去最高) | 2,864億ディルハム(史上2番目) |
| 取引件数 | 11万8,132件 | 8万6,005件 |
| 前年の同じ時期との比較 | 約39%増 | 約12%減 |
「活況」と「去年より落ち着いた」は、矛盾せずに両立します。
ニュースの見出しは前者だけを伝えがちです。
けれど投資を考えるなら、後者も同じ重さで見ておく必要があります。
出典: ドバイ土地局 公式(2026年第1四半期) / ドバイ政府メディアオフィス(2025年上半期)
過熱のサイン――専門機関は「調整」を見ている
盛り上がりの裏で、価格の下落を警告する声も出ています。
格付け会社フィッチは2025年、ある見方を示しました。
「2026年にかけて、ドバイの住宅価格は最大15%下がる可能性がある」。
理由は、新しい住宅の急増です。
2026年だけで約12万戸の引き渡しが予定されています。
これは2024年の、およそ4倍の量にあたります。
別の格付け会社ムーディーズも、2027年までに15万戸を超える供給で住宅の総量が2割増え、「2026年からの緩やかな値下がり」を見込んでいます。
実際、価格の上昇ペースは鈍り始めています。
今年1月の年約12%から、5月には4%以下まで落ちました。
過熱の熱は、少しずつ冷めているように見えます。
出典: Economy Middle East(フィッチの見通し報道) / International Investment(ムーディーズの見通し報道)
為替という、日本人だけの落とし穴
ここは、日本に住む人にこそ大事な話です。
ドバイの通貨ディルハムは、米ドルに固定されています(1ドル=3.6725ディルハム)。
だからドルで見れば、為替の心配はほとんどありません。
ところが、日本円で暮らす私たちの損益は違います。
「円とドル」の動きに、丸ごと左右されるのです。
いまは歴史的な円安です。
2026年7月初旬で1ドル=約161円。
この水準でドバイの物件を買うと、円で用意する金額は大きくふくらみます。
そしてもし将来、円高に戻ればどうなるか。
物件の値段が変わらなくても、円に直した価値は目減りします。
「価格が15%下がるかも」というリスクに、為替の振れが上乗せされる。
ここが、日本人だけが背負う固有の落とし穴です。
⚠️ 注意: 現地で語られる「利回り◯%」は、たいていドル建て(またはディルハム建て)の数字です。円に直したときの手取りは、為替しだいで大きく変わります。
出典: UAE中央銀行(ドルペッグの根拠) / Trading Economics(円ドル相場)
だから何?――焦らないための3つの確認
編集部の見立てを、言い切ります。
「史上2番目の活況」は、急いで飛びつく理由にはなりません。
数字は、盛り上がりと冷え込みの両方を、同時に示しています。
こういう時こそ、確認することは3つに絞れます。
💡 焦らないための3つの確認:
①その物件の「利回り」は円建てか、ドル建てか。円に直すといくらになるか。
②近くで2026〜27年に大量の新築が完成しないか(供給が増えると値下がりしやすい)。
③価格が15%下がっても、老後の設計が崩れないお金で買うのか。
「知人に勧められたから」「みんな買っているから」で動く時期ではありません。
数字の両面を見て、慌てない人が、いちばん損をしにくい。
私たちは、そう考えます。
よくある質問
Q1. ドバイ不動産は「今が買い時」ですか?
一概には言えません。2026年上半期の売買は史上2番目の規模でしたが、前年比では約12%減で、格付け会社は2026年にかけて最大15%の値下がりも指摘しています。盛り上がりと冷え込みが同時に起きているため、急いで判断しないことをおすすめします。
Q2. なぜ「史上2番目」なのに、取引は減っているのですか?
比べる相手の2025年上半期が、記録的に高かったためです。その年は前年比で約39%も伸びました。高すぎた山から、わずかに下りたのが2026年で、水準そのものは依然として高い、という状態です。
Q3. 日本から買う場合、為替はどう影響しますか?
ドバイの通貨は米ドルに固定されているため、ドル建てでは為替の振れは小さいです。ただし日本円での損益は「円とドル」の動きに左右されます。2026年7月時点は1ドル約161円の円安で、この水準で買うと円での負担は大きくなります。
Q4. ゴールデンビザ(10年居住権)の条件は変わりましたか?
2026年時点で、10年居住権(ゴールデンビザ)を不動産で取得するラインは200万ディルハム(約8,800万円)です。2026年には、より少額の物件でも2年の居住ビザが取りやすくなる制度変更もありました。条件は変わりやすいので、公式情報での確認が必要です。
Q5. 供給が増えると、なぜ値下がりしやすいのですか?
家の数が急に増えると、買い手より売り物が多くなり、価格が下がりやすくなります。ドバイでは2026年だけで約12万戸、2027年までにさらに多くの引き渡しが見込まれ、専門機関はこれを値下がりの主な理由と見ています。
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「投資の現在地」シリーズは、ドバイの投資にまつわる「今の数字」を、煽らず公開情報で読み解く解説枠です。
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本記事について
- 本記事は情報提供を目的としています
- 記事内容は2026年7月6日時点のものであり、最新性を保証するものではありません
- 数値・市場データは変動します。最新情報は公式機関等でご確認ください
- 本記事の情報に基づく行動の結果について、当媒体は責任を負いかねます
- 記事内の円換算は1ディルハム=約44円、1ドル=約161円(2026年7月上旬時点の概算)で計算しています
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