ドバイの家は、遺族に残せるのか

ドバイの家は、遺族に残せるのか
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「ドバイに部屋を買いました。ただ、ひとつ気がかりで」。

そう言って、その方は少し間を置きました。

「私にもしものことがあったら、あれは妻に渡るんでしょうか」。

買うときの話は、誰でもしてくれます。渡すときの話は、誰もしてくれません。

今日は、その一点を公式情報だけで整理します。

結論から。残せます。ただし「自動では」ありません

UAEでは2023年2月1日から、非ムスリム向けの新しい法律が動いています。連邦令2022年第41号、「民事身分関係法」です。

この法律の第11条には、こう書かれています。

遺言を残せば、UAE国内に持つ財産のすべてを、望む相手に譲ることができる

では、遺言がなかったらどうなるか。

同じ第11条が、その場合の分け方も決めています。配偶者に半分。残りの半分を子どもたちで等分する。男女で差はつけません。

つまり「妻に全部」ではありません。何もしなければ、半分は子どもたちに分かれていきます。

出典: UAE連邦法令ポータル 連邦令2022年第41号 / u.ae 非ムスリムの身分関係 / 米国議会図書館 グローバル法モニター

「日本で遺言を書いてあるから大丈夫」が、いちばん危ない

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

この連邦法には、母国の法律を選べる定めもあります。それを聞いて「では日本の遺言でいい」と考える方が多いのですが、不動産だけは話が別です。

ドバイには、非ムスリムの遺産と遺言を扱う独自の法律があります。2017年ドバイ法第15号。その第4条にこうあります。

⚠️ 不動産だけは、ドバイの法律が優先します

2017年ドバイ法第15号 第4条(b)は、遺産や遺言が「ドバイにある不動産に関わる場合」には、母国の法ではなくドバイで施行されている法律が適用されると定めています。同じ第3条により、この法律はドバイ国際金融センター(DIFC)の中を含め、ドバイにある非ムスリムのすべての遺言と遺産に及びます。

日本で書いた遺言が無意味になるわけではありません。

ただ、ドバイの家の行き先を最終的に決めるのは、ドバイの制度です。ここを取り違えたまま安心している方が、本当に多いのです。

DIFC裁判所も、遺言を登記していない人には資産がある首長国の裁判所の法律が既定で適用される、と説明しています。

出典: ドバイ法令ポータル 2017年ドバイ法第15号%20of%202017.html) / DIFC裁判所 遺言に関するよくある質問

名義が変わるまでに、必ず裁判所を通ります

ドバイの不動産は、ドバイ土地局(DLD)という役所の登記簿で管理されています。所有者が亡くなったあと、名義を遺族に移すにはDLDへの申請が要ります。

このときDLDが必ず求める書類が、ひとつあります。

ドバイ裁判所などの公的な機関が出す、名義変更を求める正式なレターです。相続の法的な通知書と、相続人全員の身分証明書も要ります。

つまり、家族が悲しみのなかで最初にやることは、書類集めと裁判所です。ここを避ける方法はありません。

一方で、手数料そのものは驚くほど小さい額です。DLDが公表している相続の名義変更の料金は、1物件あたり1,000ディルハム(約4万3千円)に、権利証や図面が各250ディルハム。売買のときのような4%という項目は、この表にはありません。

💡 ここでのポイント

お金の心配より、時間と書類の心配をしてください。DLDが示す処理時間は「8営業時間」ですが、これは書類がすべて揃ってからの話です。裁判所のレターが出るまでの期間はここに含まれていません。遺されるご家族が、日本から、日本語で、この作業を進める場面を想像してみてください。

出典: ドバイ土地局(DLD) 相続による所有権移転サービス

確実にしたいなら、UAEで遺言を登記する

遺される家族の手間を減らす道は、UAEの側で遺言を登記しておくことです。

2017年ドバイ法第15号の第6条が、非ムスリムの遺言登記簿を、ドバイ裁判所とDIFC裁判所の両方に置くと定めています。窓口は一つではなく、二つあります。

このうち費用が公式サイトに明記されているのは、DIFC裁判所の方です。不動産だけを対象にした遺言なら、UAE国内の不動産5件までをひとつにまとめられます。

| 遺言の種類 | 本人1人 | 夫婦で対の内容 |

|—|—|—|

| 不動産のみ(5件まで) | 7,500ディルハム(約33万円) | 10,000ディルハム(約43万円) |

| すべての財産 | 10,000ディルハム(約43万円) | 15,000ディルハム(約65万円) |

| 内容の変更(1回) | 550ディルハム+予約料55ディルハム | 同左 |

DIFC裁判所の手数料には付加価値税(VAT)がかからないと、同裁判所が明記しています。ドバイ裁判所の側の費用は公式に確認できなかったため、ここには書きません。窓口で直接ご確認ください。

登記の条件も2017年法の第8条に定めがあります。ムスリムでないこと。遺言のなかで執行する人を指名すること。証人2名の前で署名すること。

出典: DIFC裁判所 手数料表 / DIFC裁判所 不動産遺言サービス / ドバイ法令ポータル 2017年ドバイ法第15号%20of%202017.html)

日本の相続税は、ドバイの家にも届きます

最後に、日本側の話をひとつだけ。

「ドバイは税金がない国だから」という言葉を、相続の場面に持ち込まないでください。それは、ドバイの中だけの話です。

国税庁は、相続税がかかる財産の範囲をこう定めています。

財産を取得したときに日本国内に住所がある人は、取得したすべての財産が課税対象。この「すべて」には、国外にある財産も含まれます。基礎控除は3,000万円に、600万円かける法定相続人の数を足した額。ドバイの家は、この計算の外には出ません。

ここから、生活に直結する一点が見えてきます。

相続税は、現金で納めます。ところが、遺されたのがドバイの家であれば、それは現金ではありません。売って現金に換えるには、裁判所を通し、名義を移し、買い手を見つける時間が要ります。

家は残せます。ただ、家が残るということは、家族が納税資金を別に用意するということでもあるのです。

出典: 国税庁 タックスアンサー No.4102 相続税がかかる場合

編集部の見立て

はっきり書きます。

ドバイに不動産を持ちながら、UAEで遺言を登記していない状態は、宙ぶらりんです

法律が変わり、非ムスリムでも自分の意思で残せるようになりました。それは前進です。しかし「残せるようになった」と「自動的に残る」の間には、まだ距離があります。

その距離を埋めるのは、裁判所での手続きと、書類と、時間です。そしてそれを負うのは、ご自身ではなく、遺されるご家族です。

手数料の額を見るかぎり、遺言の登記は、家一軒の値段からすればごくわずかな支出でした。買うときに誰も説明してくれなかったのなら、いま確認すればよい話です。

なお本記事は制度の全体像です。家族構成や資産の持ち方で答えは変わります。実際に動くときは、UAEと日本の両方の専門家にご確認ください。

※本記事の円換算は2026年8月13日時点の目安です。1ディルハム=約43円(1米ドル=159円台、1米ドル=3.6725ディルハムの固定相場をもとに計算)。

よくある質問

Q1. 日本で公正証書遺言を作ってあります。ドバイの家もそれで大丈夫ですか?

不動産については、そのままでは足りない可能性があります。2017年ドバイ法第15号第4条が、ドバイにある不動産に関わる遺産や遺言にはドバイで施行されている法律が適用されると定めているためです。日本の遺言が無効になるわけではありませんが、ドバイの家の名義を実際に動かす手続きは、ドバイの制度に沿って進みます。

Q2. 遺言を残さずに亡くなった場合、家は誰のものになりますか?

連邦令2022年第41号第11条によれば、配偶者に半分、残りの半分を子どもたちで等分します。男女による差はありません。子どもがいない場合は両親、次いで兄弟姉妹へと移る順序が同条に定められています。

Q3. UAEに住んでいなくても、遺言を登記できますか?

DIFC裁判所は、遺言を登記するのにUAEの居住者である必要はないと明記しています。条件として挙げられているのは、ムスリムでないこと、一定の年齢に達していること、そしてUAEに資産があるか、UAEに同居する未成年の子どもがいることです。

Q4. 相続で名義を移すとき、売買と同じ4%の登記料がかかりますか?

ドバイ土地局が相続の名義変更として公表している料金表に、売買のような4%の項目はありません。示されているのは1物件あたり1,000ディルハムなどの定額です。ただし料金は改定されることがあるため、手続きの時点で公式サイトをご確認ください。

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「投資の選択肢」は、ドバイに関わる投資の種類を同じ物差しで並べて紹介するシリーズです。特定の商品をおすすめするものではありません。

本記事について

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  • 記事内容は2026年8月13日時点のものであり、最新性を保証するものではありません
  • 本記事は法律・税務の助言ではありません。実際の手続きはUAEおよび日本の専門家にご相談ください
  • 法令・手数料は変更されることがあります。最新情報は各公式サイトでご確認ください
  • 本記事は特定の事業者・商品をすすめるもの、また批判するものではありません
  • 本記事の情報に基づく行動の結果について、当媒体は責任を負いかねます

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