高さ1キロの塔がサウジに。ドバイ一強は続くか

高さ1キロの塔がサウジに。ドバイ一強は続くか
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「ドバイは今が旬ですよ」。

そう勧められた、というご相談が編集部に届きます。

その「旬」を測る物差しのひとつが、そろそろ動きます。

世界一高いビルの座が、2028年にドバイからサウジアラビアへ移る見込みだからです。

ただ、私たちが見るべきは塔の高さではありません。

同じサウジで、もっと静かで、もっと大きな変更がすでに起きていました。

2028年、世界一の高さはドバイを離れます

サウジアラビア西部の港町ジェッダで、1本の塔が伸びています。

2026年7月23日、事業主であるキングダム・ホールディングのアルワリード・ビン・タラール会長が、現地を見たうえで進み具合を公表しました。

高さは430メートルを超え、107階まで到達。

工事は週におよそ4メートルのペースで進んでいます。

完成時の高さは1,008メートル以上になる予定です。

人の手で1キロメートルを超える建物が建つのは、歴史上はじめてのことになります。

いま世界一のブルジュ・ハリファは、高さ828メートル・163階。2010年1月の開業でした。

差はおよそ180メートル。開業予定は2028年8月とされています。

出典: Newsweek「世界一の高層ビルが建設の節目に到達」 / Dezeen(2026年4月・100階到達) / ギネス世界記録(ブルジュ・ハリファ)

なぜ今、サウジが追い上げているのか

理由をひとつに絞れば、石油に頼る国のかたちを変えたいからです。

サウジは2016年に「ビジョン2030」という国の計画を掲げました。

石油の輸出に依存した経済から抜け出す、という目標です。

その資金を動かしているのが、国の資産を運用する基金(PIF)です。

運用額は約9,250億ドル(1ドル=約158円で約146兆円)。2030年までに2兆ドルへ広げる方針を示しています。

塔は、この計画のいちばん目立つ看板にすぎません。

そして看板の裏側では、もっと実務的な変更が進んでいました。

出典: PIF(公共投資基金)公式・2026〜2030年の戦略 / PIF公式(ビジョン2030の発表)

本当に動いたのは、塔ではなく「規則」でした

2026年1月22日。

サウジで、外国人が不動産を持てるようにする制度が動き出しました。

それまでサウジの不動産は、外国人にとってほぼ閉じた市場でした。

それが個人・法人・団体に開かれ、しかも国内に住んでいない人も対象に含まれています。

同じ年の6月23日には、閣議が細かい規則と対象地域を承認しました。

買える区域を示す地図が公表され、申し込みの窓口は「サウジ・プロパティーズ」という国の専用サイトに一本化されています。

ただし、聖地マッカとマディーナは別扱いです。

この二都市で持てるのは、サウジ法人と、イスラム教徒の個人に限られます。

つまりサウジは開きました。ただし条件つきで開いた。ここが肝心なところです。

出典: サウジ不動産庁(REGA)公式・制度の施行発表 / Latham & Watkins(法律事務所による制度解説) / Arab News(2026年6月・閣議承認)

それでも、ドバイの扉のほうが広く開いています

二つの国の「買える条件」を、同じ物差しで並べてみます。

項目 ドバイ(UAE) サウジアラビア
外国人に開いた時期 2002年に開放・2006年の法律で明文化 2026年1月22日に施行
国籍・宗教の条件 問わない 聖地2都市はイスラム教徒とサウジ法人のみ
住んでいなくても買えるか 買える 買える(海外の窓口で電子の身分証が必要)
買える場所 指定区域40か所以上 承認された指定区域(地図で確認)
売買にかかる主な費用 土地局への登録料4% 取引税5%+外国人が売るときの上乗せ(住宅は2.5%の案)

各国の公式情報および法律事務所の解説をもとに編集部が作成(2026年8月時点)。制度は変更される可能性があります。

費用の差は、小さくありません。

ただ、それ以上に効くのは時間だと私たちは考えます。

ドバイには24年ぶんの前例があります。

外国人が買い、住み、貸し、売って現金に戻すところまでが、繰り返し起きてきた市場です。

サウジの制度は、まだ半年ぶんの実績しかありません。

新しいことは、悪いことではない。ただ「まだ誰も出口を通っていない」という事実は、残ります。

出典: ドバイ土地局(DLD)公式 / Latham & Watkins(サウジの費用)

だから何?――「今買わないと乗り遅れる」と言われたら

ここまでの話を、暮らしの言葉に戻します。

隣に強い競争相手が現れると、ふつう、買う側の立場は強くなります。

選べる先が増え、条件を比べられるようになるからです。

ですから「今買わないと乗り遅れる」は、順序が逆です。

ドバイの足元の数字も、正直に書いておきます。

2026年上半期の売買は86,005件・2,864億ディルハム(約12.3兆円)で、史上2番目の上半期でした。

ただし過去最高だった前年同期の3,266億ディルハム(約14兆円)は下回っています。

空の便も同じです。

ドバイ国際空港の2025年の利用者は9,520万人、国際線では11年連続の世界一でした。

一方で2026年1〜3月は、周辺の空域が混乱した影響で前年同期から20.6%減っています。

💡 ここが見落とされます

そのドバイの空港にとって、いちばん大きな客の出どころはインド、その次がサウジアラビアです。2025年は750万人がサウジから訪れました。二つの街は競い合いながら、同時にお互いの客を運び合っています。「どちらが勝つか」という見方だけでは、実態を取り違えます。

編集部の見立てを、はっきり書きます。

高さの記録は2028年に移ります。けれど、それで何かが決まるわけではありません。

見るべきは誰が・どんな条件で・いつから持てるのかという規則のほうです。

その規則は、これから両国で動きます。動いている最中に「今すぐ」と急がされたら、それは相手の都合だと考えてよいと思います。

出典: Khaleej Times(2026年上半期のドバイ不動産) / ドバイ空港公式(2025年の実績) / Arab News(2026年1〜3月の利用者数)

よくある質問

Q1. 世界一の高さがサウジに移ると、ドバイの不動産は下がりますか?

高さの記録と不動産価格を直接つなぐ公的なデータはありません。ブルジュ・ハリファが世界一になった2010年以降も、ドバイの価格は上がる時期と下がる時期の両方がありました。記録が移ることそのものより、税や居住ビザの条件、供給される戸数といった実務的な要素のほうが値段には効きます。

Q2. サウジのほうが制度が新しいなら、そちらを買ったほうが得ですか?

新しさは有利にも不利にも働きます。有利な点は、国が力を入れている段階だということ。不利な点は、外国人が売って現金に戻した実例がまだ乏しいことです。買うときの条件だけでなく、売るときにいくら手元に残るかを確かめてから比べてください。

Q3. 日本に住んだままでも、サウジの不動産は買えますか?

制度上は、国内に住んでいない外国人も対象に含まれています。ただし海外にあるサウジの窓口で電子の身分証を先に取る必要があり、買える場所も承認された区域に限られます。聖地マッカとマディーナでは、イスラム教徒の個人とサウジ法人以外は持てません。最新の条件はサウジ不動産庁の公式サイトでご確認ください。

Q4. 「ドバイはもう終わり」と言われました。本当ですか?

数字を見るかぎり、そうは読めません。2026年上半期の売買は史上2番目の水準で、空港の利用者数も国際線で11年連続の世界一でした。ただし前年の最高記録は下回り、年明けからの3か月は周辺情勢の影響で利用者が2割減っています。「終わり」でも「絶好調」でもない、というのが正確なところです。

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「投資の現在地」は、ドバイの市場でいま何が起きているかを、煽らずデータで確かめるシリーズです。特定の商品をおすすめするものではありません。

本記事について

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  • 記事内容は2026年8月10日時点のものであり、最新性を保証するものではありません
  • 建物の高さ・完成予定年は、工事の進み具合により変更される可能性があります。最新の情報は事業者および設計者の公式発表でご確認ください
  • 各国の不動産制度・税率・居住ビザの条件は変更される可能性があります。最新情報はドバイ土地局、サウジ不動産庁(REGA)等の公式情報でご確認ください
  • 円換算は1ディルハム=約43円、1ドル=約158円(いずれも2026年8月上旬)で計算しており、為替により変動します
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