売買4割減、家賃も下落。「利回り8%」はまだ成り立つか

売買4割減、家賃も下落。「利回り8%」はまだ成り立つか
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7月16日に、「利回り8%」は本当かという記事を書きました。

それから3か月で、ドバイの売買は細り、家賃は下がりました。

10月7日の現地紙The Nationalによると、7〜9月の住宅売買は、件数が前の年の同じ時期より38%、金額が47%減っています。

家賃も、2月を山に半年続けて下がりました。

先に、私たちの見立てを申し上げます。

利回りの数字は、少ししか動いていません。大きく動いたのは、受け取る家賃と、売るときの値段です。

7月の計算を、いまの数字でやり直します。

特定の物件をすすめる話は、今回もしません。

7〜9月、売買は件数で38%、金額で47%減った

数字の出どころは、不動産調査会社Cavendish Maxwell(キャベンディッシュ・マクスウェル)の集計です。

7〜9月の住宅売買は726億ディルハム(約3兆1,200億円)、件数は約3万4,000件でした。

Cavendish Maxwellの担当者は、2月末に始まったイランをめぐる紛争のあと、買い手が慎重になったと説明しています。

値段のほうは、資料によって下がり幅が違います。

格付け会社のS&P Global Ratingsは、業界の報告を引いて「2025年末から2026年9月までに5〜15%下がった」としました。

ところがCavendish Maxwellの8月の平均単価は、前の年の8月より1.7%低いだけです。

食い違いの一部は、比べる相手の違いで説明がつきます。

不動産データ会社REIDIN(レイディン)の指数で見ると、8月の値段は前の年の8月より0.8%低く、今年の高値だった2月よりは5.0%低い水準でした。

💡 ここまでのポイント

「何%下がった」という数字は、いつと比べたかで変わります。値下がりの数字を見たら、比べている相手の月を先に確かめてください。

出典: The National(2026年10月7日) / Khaleej Times(2026年9月7日) / REIDIN UAE住宅価格レポート 2026年8月号

家賃は、値段の2倍近い速さで下がっている

REIDINの指数では、ドバイの家賃は2月を山に、8月まで6か月続けて下がりました。

2月から8月までの下げ幅は9.3%で、同じ期間の値段の下げ(5.0%)の2倍近くになります。

3月から8月の下げは、集合住宅(アパート)が9.6%、戸建てが5.8%と、住宅の種類で差があります。

4〜6月の3か月については、ほかの調査会社3社も、1〜3月と比べた家賃の下落を報告しています。

下げ幅は2〜6%と会社によって開きがありますが、下がったという向きは同じです。

下げが目立つのは、名の知れた地区です。

Cushman & Wakefield Coreの4〜6月の報告は、アパートの家賃の下げが大きかった地区にダウンタウン(14%)を挙げました。

ドバイ・ヒルズ・エステートとドバイ・マリーナ(ともに10%)が続きます。

The NationalもKhaleej Timesも、背景として新しい家の増加を挙げています。

Cavendish Maxwellによると、1〜6月に完成した住宅は2万4,800戸で、前の年の同じ時期より38%多くなりました。

6月26日のThe Nationalには、部屋を貸している持ち主の話が載っています。

「19万5,000ディルハムで募集したが、その値段では十分な関心が集まらなかった。17万5,000ディルハムまで下げて、借り手を決めた」— ドバイで部屋を貸す投資家(The National 2026年6月26日・編集部訳の抜粋)

出典: REIDIN UAE住宅価格レポート 2026年8月号 / Cavendish Maxwell 2026年上半期レポートの発表文(Zawya掲載) / Khaleej Times(2026年8月9日・Cushman & Wakefield Core) / Khaleej Times(2026年8月27日・Colliers) / The National(2026年6月26日)

利回りの数字は、0.36ポイントしか動いていない

利回りは「1年の家賃÷値段」で出します。

家賃と値段が一緒に下がると、割り算の答えはあまり変わりません。

REIDINが毎月出しているアパートの表面利回り(経費を引く前の利回り)は、3月が7.10%、8月が6.74%でした。

差は0.36ポイント、つまり7.10から6.74を引いた分だけです。

アパートの数字 3月 8月 変化
家賃の指数 140.20 126.74 9.6%下落
値段の指数 145.56 138.39 4.9%下落
表面利回り 7.10% 6.74% 0.36ポイント低下

これだけ見ると、小さな変化です。

金額に直すと、印象が変わります。

3月に100万ディルハム(約4,300万円)でアパートを買い、年7万1,000ディルハムで貸し始めた人がいたとします。

指数どおりに動いたなら、8月に新しく貸すときの家賃は約6万4,200ディルハム、売るときの値段は約95万1,000ディルハムです。

家賃の減りは、年に約6,800ディルハム(約29万円)。

値段の減りは、約4万9,300ディルハム(約212万円)になります。

⚠️ この計算の読み方

指数をそのまま当てはめた仮の計算で、予測ではありません。指数は取引の真ん中の値をならしたもので、個々の物件はこのとおりには動きません。管理費や空室の分も引いていません。

💡 だから何?

値段の減りは、いまの家賃のおよそ9か月分にあたります。下がる局面で手元のお金を大きく動かすのは、利回りの小数点ではなく、売るときの値段です。

出典: REIDIN UAE住宅価格レポート 2026年3月号 / 同 2026年8月号

いまの借り手がいる間は、下落が見えにくい

家賃の下落は、持ち主の通帳にすぐには表れません。

ドバイの賃貸の法律(2007年法律第26号)の第13条は、2008年の改正で、契約を更新するにあたって貸し手と借り手が家賃の増減を見直せると定めました。

家賃が動くのは、おもに更新のときです。

9月23日のKhaleej Timesが、その差を数字で伝えました。

現地の不動産会社が、ドバイ土地局の賃貸契約のデータを分析した結果です。

同じ建物・同じ間取りで比べると、新しい契約の家賃は1月より15.3%低く、更新の家賃は約1%しか下がっていませんでした。

借り手は動き始めています。

7月と8月は、新しい契約の件数が更新の件数を上回りました。

記録のある2023年1月以降で初めてのことです。

持ち主にとっては、借り手が出ていった時点で、15%ほど低い家賃と空室の期間が同時にやって来ます。

値上げで取り返すのも簡単ではありません。

2013年の政令第43号は、家賃が同じような物件の相場より安くても、その差が10%までなら、更新のときに値上げできないと定めています。

相場のほうが下がれば、この枠に入る物件は増える計算です。

出典: ドバイ法令ポータル 2008年法律第33号(2007年法律第26号 第13条の改正) / Khaleej Times(2026年9月23日) / ドバイ法令ポータル 2013年政令第43号

7月の記事の、変わった点と変わらない点

変わった点は三つあります。

一つ目は、平均の利回りです。

REIDINの8月の数字は、住宅全体で6.28%、アパートで6.74%。

アパートは3月の7.10%から下がり、「8%」は平均からさらに遠くなりました。

二つ目は、値段です。

7月の記事では、上半期の価格について「上昇したと複数の経済紙が報道」と書きましたが、8月に前の年を下回りました。

Cavendish Maxwellによれば、前の年を下回るのは2021年2月以来です。

三つ目は、家賃の向きです。

同社の調査担当者は6月、毎年ほぼ自動的に家賃が上がる時代は、当面は終わりに近づいているのかもしれない、と述べました。

変わらない点もあります。

広告の利回りは経費を引く前の数字で、手取りとは別物です。

7月の記事で書いたとおり、ディルハムは米ドルに固定されているので、円に直した受取額は為替でもう一段動きます。

広告の「利回り◯%」を見たら、次の三つを確かめてください。

  • その家賃は、いまの借り手が払っている額か、これから貸すときの見込みか
  • その値段は、売り出しの値札か、実際に成約した値段か
  • 売るときの値段が下がった場合を、計算に入れているか

家賃の相場は、ドバイ土地局の「賃料指数」のページに、地区・部屋数・いまの家賃などを入れると調べられます。

「利回り8%」が、うそになったわけではありません。

ただその8%は、いつの家賃を、いつの値段で割ったかで意味が変わります。

下がる局面では、利回りより先に、売るときの値段を見る。私たちはそう考えます。

出典: REIDIN UAE住宅価格レポート 2026年8月号 / Khaleej Times(2026年9月7日) / The National(2026年6月26日) / ドバイ土地局 賃料指数(公式サービス)

よくある質問

Q1. ドバイの家賃は、いまどのくらい下がっていますか?

REIDINの指数では、2026年8月の家賃は前の年の8月より5.0%低く、今年の高値だった2月からは9.3%下がりました。4〜6月については、ほかの調査会社3社も2〜6%の下落を報告しています。

Q2. 家賃が下がったのに、利回りがあまり変わらないのはなぜですか?

利回りは1年の家賃を値段で割った数字だからです。両方が一緒に下がると、答えは大きく動きません。REIDINのアパートの表面利回りは3月の7.10%から8月の6.74%へ下がっただけですが、同じ期間に家賃は9.6%、値段は4.9%下がっています。

Q3. すでに貸している部屋の家賃も、すぐ下がるのですか?

すぐには変わりません。Khaleej Timesの報道では、更新の家賃は約1%しか下がっていません。借り手が退去して新しく貸し直す場合は、1月より15.3%低い水準だと報じられています。

Q4. 広告の「利回り8%」は、信じてよいですか?

数字より、計算のもとを確かめてください。いつの家賃をいつの値段で割ったのか、経費を引く前か後か、売るときの値段が下がる場合を入れているか、の三点です。REIDINの8月の平均はアパートで6.74%なので、8%は平均より1ポイント以上高い条件の数字です。

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本記事について

  • 本記事は情報提供を目的としており、2026年10月8日時点の内容です。最新性を保証するものではありません
  • 円換算は1ディルハム=42円95銭(2026年10月8日午前9時59分時点)の概算です。為替は日々動きます
  • 7〜9月の売買はCavendish Maxwell(民間の調査会社)の集計です。ドバイ土地局による公式の集計は、執筆時点で確認できていません
  • S&P Global Ratingsの「5〜15%の下落」はThe Nationalが伝えたもので、報告書の原文と、対象の地区・住宅の種類は確認できていません
  • 家賃・値段・利回りの月ごとの数字は、REIDIN(民間のデータ会社)の月次レポート2026年2〜8月号の原文で確認しました。公的な統計ではなく、9月号は執筆時点で確認できていません
  • 前の年と比べた家賃の数字は、調査会社で分かれます。Cavendish Maxwellは6月時点で前の年より7.8%高いとしており、本記事はREIDINの数字にそろえました
  • 変化率と100万ディルハムの計算例は、公表された指数から編集部が計算したもので、予測ではありません
  • 地区ごとの家賃の下げ幅は、いつと比べた数字かが報道に明記されていません
  • 新しい契約と更新の家賃の差は、現地の不動産会社による土地局データの分析を伝えた報道に基づきます。土地局自身の発表ではありません
  • 7月16日の記事と今回とでは利回りの調査会社が違うため、差し引きの比較はしていません
  • 本記事は特定の物件・不動産会社を推奨するものではありません。法令・制度は変更されることがあります
  • 本記事の情報に基づく行動の結果について、当媒体は責任を負いかねます

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