「完成前に転売して儲かる」は本当か

「完成前に転売して儲かる」は本当か
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「引渡し前に売れば、値上がりした分だけ受け取れますよ」。

完成前の物件を勧められた方から、この言葉をよく聞きます。

まだ建っていない家を買い、建つ前に次の人へ渡す。

それだけで差額が手に入る、という説明です。

法令とドバイ土地局の公式案内だけで確かめました。

先に立場を申し上げます。

「いつでも売れる」という前提で買うのは、危険です。

売ってよい時期を決めているのは法律ではありません。

開発会社と交わす契約書です。

「完成前に売る」とき、売っているのは建物ではありません

まだ建っていない以上、引き渡せる建物はありません。

売買の対象は、開発会社と結んだ契約上の立場そのものです。

「この部屋を受け取る権利と、残りを払う義務」を次の人に引き継いでもらう取引になります。

この立場は、完成前の物件だけを載せるドバイ土地局の仮の帳簿に記録されています。

現地ではオクード(仮登録)と呼ばれます。

ここに書き換えが入らない売買は成立しません。

2008年第13号法の第3条は、仮の帳簿に記録されない譲渡は無効だと定めています。

当事者どうしが合意しただけでは終わりません。

開発会社と土地局に帳簿を書き換えてもらって、はじめて売れたことになります。

出典: ドバイ法令ポータル 2008年第13号法(仮不動産登記簿の規制)

売ってよい時期を決めているのは、法律ではなく契約書です

勧誘の場でよく出るのが「代金の3〜4割を払っていれば売れます」という説明です。

この数字の出どころを追いました。

法律には書かれていませんでした。

2008年第13号法を最後まで確認しましたが、買主が第三者へ譲渡する時期を定めた条文は1つもありませんでした。

土地局の手続き案内にも、最低いくら払えば売れるという記載はありません。

では、どこに書いてあるのか。

売買契約書です。

何割払えば認めるかは、開発会社ごとにも事業ごとにも変わります。

実務上の関門もあります。

土地局は売買の登記に、開発会社が出す異議なし証明を必要書類として挙げています。

自由保有地区では、これがないと手続きが進みません。

売れる・売れないを最後に決めるのは、市場ではなく開発会社です。

「いつでも売れます」と説明されたら、契約書のどの条項にそう書いてあるかを見せてもらってください。

口頭の説明は帳簿を動かしません。

出典: ドバイ土地局 公式 完成前物件の登記手続き案内 / ドバイ土地局 公式 売買登記の必要書類

売るときの費用。4%を誰が払うかは決まっていません

売れる条件が整ったとして、次は費用です。

土地局に納める登記手数料は、売買額の4%です。

2013年の政令は、この4%を「売主と買主で等しく分ける」と定めています。

法律の建前では、売主2%・買主2%です。

ただし現地では、買主が4%全額を負担する契約が多いとされます。

別段の合意が優先されるためで、つまり交渉ごとです。

どちらか一方に決まっている、という説明は正確ではありません。

残りの費用は次のとおりです。

項目 金額 誰が定めているか
土地局の登記手数料 売買額の4%(法の建前は売主2%・買主2%) 2013年政令
登記所の手数料 売買額50万ディルハム(約2,100万円)以上で4,000ディルハム(約16万8,000円)+税 土地局
開発会社の異議なし証明 公表されていないことが多い 開発会社
開発会社の名義変更料 同上。割合で取る例が報じられている 開発会社
仲介手数料 取り決めによる 当事者間

上の2つは公表されていますが、下の3つは開発会社と当事者しだいです。

値上がり分を数える前に、この5つを引いてください。

出典: ドバイ法令ポータル 2013年執行評議会決議第30号(土地局手数料)

買い手が付かなかったとき、支払いの義務は消えません

いちばん確かめておくべきなのは、売れなかった場合です。

転売できないまま、次の支払日が来ます。

払えなければ契約違反になり、開発会社は土地局に届け出ます。

土地局から30日の催告が届き、なお解決しなければ、開発会社は裁判所を通さずに手を打てます。

何ができるかは、工事がどこまで進んでいるかで変わります。

工事の進み具合 開発会社ができること
80%超 契約を続けたまま残代金を請求/競売を申し立てる/解除して物件価格の40%まで留保
60〜80% 解除して物件価格の40%まで留保
60%未満(着工済み) 解除して物件価格の25%まで留保
未着工(開発会社の責によらない) 解除して支払済み額の30%まで留保

この表で大事なのは、40%と25%が何に対する割合かです。

支払った額ではありません。

契約書に書かれた物件価格に対する割合です。

工事が8割を超えていれば、さらに重くなります。

開発会社は契約を維持したまま、残りの代金を請求できます。

売れないから抜ける、という選択肢がこちら側にありません。

この決まりは2017年第19号法によるもので、公の秩序に関わる規定とされ、契約で緩めることはできません。

2017年より前の契約にも、さかのぼって適用されます。

⚠️ 見落とされやすい点

「解約すれば払った分は戻る」という理解は誤りです。工事が6割を超えていれば、開発会社は物件価格の4割までを留保できます。頭金しか払っていない段階でも、計算のもとは物件価格です。

出典: ドバイ法令ポータル 2017年第19号法(2008年第13号法の改正) / 同 第11条の公式解説

だから何?――転売は「出口」ではなく、もう1つの取引です

完成前の転売は、買ったものを換金する行為ではありません。

買い手を自分で見つけ、開発会社の承諾をもらい、費用を負担して、もう一度取引を成立させる作業です。

最初の取引と同じだけの手間と、不確かさがあります。

勧誘の言葉は、こう読み替えてください。

「引渡し前に売れば値上がり分が取れる」は、「買い手が現れ、開発会社が承諾し、費用を引いてなお差額が残れば」という条件つきの話です。

この3つに、自分で決められるものは1つもありません。

💡 契約前に確かめる3つ

①譲渡を認める条件は契約書の第何条にあるか。②異議なし証明と名義変更料はいくらか。③支払いが滞ったとき留保されるのは物件価格の何%か。この3つに書面で答えが返らない相手とは先へ進まない、という判断もあります。

私たちは、完成前の物件そのものを否定しません。

前回お伝えしたとおり、これは「安く始める」のではなく「時間を差し出す」取引です。

問題は、その時間を途中で引き上げられるという前提のほうにあります。

よくある質問

Q1. 完成前の物件は、いつから転売できますか?

一律の決まりはありません。ドバイの法律に、買主が第三者へ譲渡できる時期を定めた条文がないためです。何割払えば認めるかは売買契約書に書かれ、事業ごとに異なります。代金の3〜4割という説明は業界の目安であって、法律の定めではありません。

Q2. 開発会社の承諾がなくても売れますか?

売れません。ドバイ土地局は自由保有地区の売買登記で、開発会社が発行する異議なし証明を必要書類に挙げています。この書面が出なければ登記が進まず、仮の帳簿に記録されない譲渡は2008年第13号法で無効です。

Q3. 売るとき、土地局の4%は売主と買主のどちらが払いますか?

2013年の政令では売主と買主で等しく分ける、つまり各2%と定められています。ただし別段の合意が優先されるため、実際には買主が4%全額を負担する契約が多いとされます。交渉で決まる部分です。

Q4. 買い手が見つからず支払えなくなったら、払った分は戻りますか?

全額は戻りません。2017年第19号法により、工事が60%以上進んでいれば物件価格の40%まで、60%未満なら25%までを開発会社が留保でき、残りが返金されます。基準が支払済み額ではなく物件価格である点にご注意ください。

Q5. 事業そのものが中止になった場合はどうなりますか?

不動産規制庁が理由を示して事業の中止を決めた場合は、2017年第19号法により、開発会社は支払われた全額を返金しなければなりません。手続きは2007年第8号法の専用口座の仕組みに沿い、買主側の遅れによる解除とは扱いが分かれます。

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本記事について

  • 本記事は情報提供を目的としており、2026年8月27日時点の内容です。最新性を保証するものではありません
  • 譲渡が認められる支払い割合は法令ではなく個別の売買契約で定まるため、数値を断定していません
  • 異議なし証明の発行料と名義変更料は公表されていないことが多く、金額は記載していません。土地局の4%を誰が負担するかも契約による合意で変わります
  • 円換算は1ディルハム=約42円(2026年8月時点)で計算した概算です
  • 本記事は特定の物件・開発会社・投資商品を推奨するものではありません
  • 法令・制度は変更されることがあります。最新情報は公式機関等でご確認ください
  • 本記事の情報に基づく行動の結果について、当媒体は責任を負いかねます

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  • 記事内容は2026年9月11日時点のものであり、最新性を保証するものではありません。
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